研究活動

全身性エリテマトーデス研究部

概要

自己免疫疾患は、免疫系の「不適切な応答」が生じることにより自己を攻撃する病気である。全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;SLE)はその最も代表的な疾患と位置づけされ、科学がこれほど発達した現在でも自己免疫疾患、SLEの原因に関しては全貌が明かされていない。SLEの免疫現象や病態は非常に多彩で多様である。しかし患者さん個々人でのSLEの「SLEらしさ」は示される。
研究面から克服すべき点は、免疫学の根本である「抗原特異性」の問題に関係して、SLEの自己抗原の存在•認識機序が未解明である。さらに、発生した多様性をもつ自己反応性リンパ球が増殖•維持される機序についても解明する必要がある。長い年月で極めて低い確率(偶然)の積み重ねで発症すると考えられるが、かつこれらの「免疫寛容」の破綻を抑止する機構が未解明である。
臨床面から克服すべき点は、この疾患の予後はわずか数十年前と比較しても大幅に改善したものの、患者さんのevent-free期間が満足なものではないことや再燃を完全には予測や防止できないこと、難治性病態が存在することが問題として残存している。20歳頃の女性に多く発症し、よって就学、就職、出産を含めその人生に大きな影響が生じる。本質的な理解によって、この極めて難解なSLEの病因を解明することを目標とし、研究に全力を尽くす。加えて、自己免疫疾患の理解を免疫システムや生命現象の理解に結びつけるべく視野を広く持つ。

1.免疫寛容破綻の機序の解明;SOCS1(suppressor of cytokine signaling 1)と制御性T細胞(regulatory T cell;Treg)の研究

SLEなど自己免疫疾患の発症に関係する免疫寛容破綻の機序を解明すべく、細胞としては「Treg」、分子としては「SOCS1」に今後も着目する。
IFNgammaなどのサイトカイン抑制分子であるSOCS1がT細胞やTregにおいて欠損すると、マウスはSLE様の自己免疫疾患を発症し、制御性T細胞はサイトカイン産生細胞に変化する「可塑性」を示した(文献1、2)。これらの結果を基に、今後もSOCS1、Tregの抑制機能異常と免疫寛容破綻の関係の解明を主軸に、SLEの原因解明のための研究を進める。
また、SLEの発症•病態への関与が示唆されるウイルスなどの病原体と免疫寛容破綻の関係も解明する。そのために、自己反応性のT細胞受容体を有する制御性T細胞の抗原認識機構についても、SLEの観点からさらに深く研究する。

2. SLEの治療薬の作用機序の解明

抗BLyS抗体やインターフェロンα受容体抗体が近い将来SLE患者に導入される。Treg輸注療法もエビデンスが蓄積されつつある。SLEの既存の治療法に加えこれらの治療法の作用機序をさらに詳細に解明する。これらの解明をSLEの原因•病態の解明に反映する。

* 当研究部門主任研究員の高橋令子は、病院では「膠原病リウマチ内科」診療部長として診療も行っております。日本リウマチ学会の専門医•評議員です。日常診療で患者さんから頂いた知見をSLEの原因解明のために活かし、多くの困難が少しも早く解決出来ますように、今後も努力して参ります。

【論文】
1. Takahashi R, Nakatsukasa H, Shiozawa S, Yoshimura A. SOCS1 Is a Key Molecule That Prevents Regulatory T Cell Plasticity under Inflammatory Conditions. J Immunol. 2017;199:149-158
2. Takahashi R, Nishimoto S, Muto G, Sekiya T, Tamiya T, Kimura A, Morita R, Asakawa M, Chinen T, Yoshimura A. SOCS1 is essential for regulatory T cell functions by preventing loss of Foxp3 expression as well as IFN-gamma and IL-17A production. J Exp Med. 2011;208:2055-67.

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