研究活動

病理学研究部

研究課題
  1. ステロイドホルモン依存性腫瘍増殖のメカニズム
  2. ビタミンB12・漢方薬による腫瘍増殖制御
研究概要

生体の微妙な調節から逃れ、自律的・非可逆的・過剰という特徴を示す細胞増殖を「腫瘍」と呼びます。悪性腫瘍は放置されると生体を死に至らしめるため、その診断・治療・予防は医療上の重要課題の1つです。腫瘍は、発生母体の特徴を様々な程度に残しており、ホルモン刺激に応じて生理的に数の増減反応を示す細胞から発生する腫瘍細胞の増殖は、多くの場合、ホルモンにより影響を受けます(ホルモン依存性癌)。当研究部では、ステロイドホルモン依存性癌増殖の機序を解析する目的で、腫瘍から樹立したホルモン依存性細胞(SC-3やB-1F)を用い研究を行っています。中でもマウスの癌から樹立した細胞株SC-3は、無血清培地で著明な男性ホルモン依存性増殖を示し、ステロイドホルモンにより誘導される増殖因子(AIGF:後にFGF-8)の発見につながりました(大阪大学医学研究科)。更にB-1Fは女性ホルモン依存性増殖を示し、arachidonic acid metaboliteのleukotrieneの関与が明らかとなりました。また漢方薬の腫瘍増殖への影響を検討する中で、linoleic acid metaboliteの13(S)-HODEも増殖に関与することを見出しました。

一方、様々なvitaminの抗腫瘍効果が報告されている中、SC-3を系として用い、vitB12(特にmethylcobalamin:MeCbl)の抗腫瘍効果を報告してきましたが、男性ホルモンやMeCblにより発現が変動すると思われる遺伝子を見出し、現在、研究を進めています。

ホルモン依存性癌はその増殖がホルモンにより制御されているという点で非常に特徴的ですが、その研究から得られた知見は、単にホルモン依存性癌にとどまらず、広く癌の診断・治療・予防に応用できる可能性が高いと考えています。

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